ロビーが欲しいのではない。キレイが欲しいのである。
選手の皆さんも
ロビー大集合。マニア情報を集めました。
玄関は電気が消えて薄暗く、
自動ドアがあかないのではないか
と不安に思いながら、立ってみると
何の違和感もなく
普通に開いた。
正面のロビーは電気がついて
いたけれど、そこにも誰1人
いなかった。
左側にある受付のような
カウンターの前にたつと、
その奥に、のれんがかけられていて
60代ぐらいのオーナーさんだと
思うような人がでてきてくれた。
「先ほどお電話したのですが」
「あっ、はいはいはい、
お食事は六時半ごろでいいですかね、
お風呂は室内と露天と両方
洗っときましたんで、すきな時に
はいってください。12時までです。
今日は他に誰も泊りが
いないんで、いつもは時間制
だけど自由に入ってください」
「ありがとうございます」
「では、お部屋に案内します。
どうぞ」
80人ぐらいは、泊まれるであろう
広さの旅館は本当にだれもいなかった。
「泊めていただき
助かりました」
「このシーズンに開けているのは
うちぐらいですから。
夏の海が終われば
誰も来ないですよ」
「えっ、でもこちらに
電話する前の2件には
満室と喫煙室しかないということで
無理でした」
「まっさか~、それは
赤字になるから
あけないだけですよ。
まれに企業の研修とかで
予約がはいりますが、
そんなのまれです。
それに、それだけで満室
になるなんてことは、よそ様
ではあるかもしれなけど、
この辺じゃまずないです」
「そうだったんですか、本当に
ありがとうございます」
「こんな時期に突然こられる
方は、みんなきまっている。
明日は駅までおくりますね。
朝は凍結して危ない。
電車までお見送りしますから」
部屋につき、私とぷう助は
温かいヒーターの前で
手のひらをかざしながら、
全身をあたためた。
その後、いわれた時間に
食堂といわれる
ところへいき、何品もの
おかずに温かい団子汁を
いただいた。
お腹いっぱいのまま、ぷう助と一緒に
お風呂へ行き
戻ってくると、布団が用意されていて
先にぷう助の歯磨きを終わらせ、
私がみがきおわって、布団へ戻ると
ぷう助は眠っていた。
知らない場所で、いつもの何倍も
遊んだのだから
無理もない。
私は今日のぷう助の
顔が、急にとてつもなく
切なくなった。
あんなに砕けた、綺麗な
笑顔のぷう助をみたことがなかった。
翌朝、オーナーさんらしき人に
電車とバスの時刻表をみてもらい、
電車で大きな駅に向かうことにした。
駅まで送ってくれる
車の中で、その方は
「電車にのるところを見ると
安心する」
といった。
私は最後のその言葉に、
なぜ他の旅館が赤字になるから
たった2人のために
宿泊などさせないのに、
この旅館だけは
あけているのだろうという
疑問が解けた。
食事も丁寧に
用意してくれ、お風呂だって
1カ所でいいのに、
わざわざ2ヶ所も自由にしていいと
いう。
多分、私たちは死にに来ている
と思われている。
ここに来る前は、たしかに
そうだったけれど、バスに乗った
時から、自由に生きていて
死なんてどうでもよかった。
「おかげさまで、最高の
思い出が出来ました。
ずっと、仕事が忙しくて
バス好きの息子をかまって
あげられなかったので、今回
突然だったのすが、思いつきの
バス旅行ができて最高です」
「そうだったんですか~!
なーんだ、よかった。
ここからは、見えないんですが
あの海の岩場がありますでしょ、
あそこの引っ込んだところが
自殺の隠れ名所でしてね。
こんな時期に観光に来る人なんて
あったもんじゃない。
そこに行きたい人が
宿代の安い順に
電話かけてうちにくる」
「わざわざ赤字になるのに、
旅館をそのたびにあけるのですか。
私たちは違いますが、でも
そのおかげで大変助かりましたけど」
「まぁ、赤字ったって、大したことない
額ですよ。
自分の生まれ育ったところが
自殺の名所なんて嫌なだけです。
それに親御さんの
気持ちを考えたらねぇ…」
駅に着き、私たちは単線
の上を走ってくる電車に乗って、
すぐに送ってもらった
車を探した。
車の窓を全開にしてくれ
ぷう助にむかって
手を振り続けている
のをみつける。
私たちも笑顔で
手を振り続け電車は
発車した。
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