あけましておめでとうございます。
長男のミンホは年長さんになる年。
次男のテミンは年少さんになる年。
そして僕とユンホはふたりで仕事をする日が増える年。
この子達に寂しい思いをさせないためにはどうすることがベストなのか、考えて実行しなくてはいけない年だ。
疎かにしていいことは、きっと、多くない。
外からの目も、僕達自身の目も、きっと厳しいには変わりのない1年になるのだろうから。
『テム、あーん、』
『あ、ダメダメ、そんなにおっきいお餅を食べさせちゃダメだよ、』
大きいままのお餅を食べさせようとするミンホの手を止め、小さくちぎったお餅をミンホに持たせてテミンの口に運ぶ。
『おいしねー、にーに、あーん、』
今度は大きいままの餅を手で掴んでミンホの口に押し込もうとするテミン。
『ミノ、小さく少しだけかじってあげよう?』
『うん!』
突き出された餅の角をかじった後、噛みながらテミンを抱きしめるミンホ。
そんなふたりをヒヤヒヤしながら見守る僕とユンホは何も食べた気がしない状態である。
自分達で食べられるようになったからこそ、ドキドキが増えてしまうものだね。
そんな正月を自宅で過ごしている僕達一家である。
『あんころ餅食べたい。』
夫の母が作ってくれたものを箸で取り、夫の皿に乗せようとすると、指で自分の口を指してきた。
食わせろと言うのか。
『えー、パパもー?』
ミンホが鋭い指摘をしてくれるまでに成長したこの冬である。
『いんだよ、正月くらい。』
『いつもしてるー、』
『ふふ、』
日に日にいい勝負というか同レベルになりつつあるパパと長男だ。
『パパあーん、』
『およっ』
先に食べさせてくれたのは、手をぐちゃぐちゃにして餅を掴んでいるテミンだった。
『おおお、別な食べ物になったな。』
と、言いつつ息子の手から餅を食べるなんと優しいパパだこと。
口周りをぐちゃぐちゃにしたパパの口を拭い、次男のぐちゃぐちゃになったおててを拭うママは僕なんだけどね。
僕は未だにろくにお餅を食べられていない。
そして着信音。
スマートフォンを見ると電話だった。
『もしもし、シウォン?』
『しおにせんせい!』
ミンホの耳がピンと立つ。
「あ、ちょっと画面切り替える。」
シウォンはテレビ電話的な機能に切り替えた。
見覚えのある背景だ。
『あー、ようちえん!』
『ドンピ、』
どんぴ…それは誰のことだい、テミンや。
「新年会やってるんだ、今から来るかい?」
『あー、あー、ヒニムせんせいいるよ!』
『どんどん、どんぴ!』
シウォンの後ろでピースをしているドンヘ先生。
どんぴとは、ドンヘのことか。
「あー、ユノヤ~あけおめ~!」
どんぴ先生とウニョク先生がこちらの背後にいる夫に手を振る。
『あけおめ~!』
『あけおめえ!』
『らけおめえ~』
こちら側の3人が僕のスマホを覗き込みながら手を振る。
『ねえ、シウォンが今から幼稚園に来ないか?って言ってる。』
『まじ?』
『いくーっいくーっ』
『テム!どんぴ!』
子供たちも乗り気になってしまっている。
「おいでー!」
先生達が入れ替わり立ち代り手を振りながら子供たちに呼びかける。
『あー、おにゅせんせい!』
大好きな先生を見つけたミンホとテミンはその場で飛んで跳ねてアピールをする。
夫と目を合わせると、彼はうんと頷いた。
シウォンを戻すと、僕は行くと返事をした。
急いで餅パーティの片付けをし、無事な餅を包んで持っていくことにした。
『ママ、キボミちゃんとジョンにーは?いる?』
『うーん、どうだろう。さっきのお電話では見えなかったね。』
『えー、あいたいなぁ、』
兄弟でお揃いのダッフルコートを着せ、テミンにはクマちゃんの帽子を被せる。
夫はいつの間にか買っていた皮のコートを羽織り、車の鍵を手にしている。
準備完了ですか。
『呼んであげたら?ダメもとで。』
子供たちの熱い視線を下から感じる。
迷惑ではないだろうか。
ふたりの保護者に連絡をする。
最初にジョンヒョン君。
次にキボミちゃん。
するとふたりとも捕まってしまい、幼稚園の先生達のパーティにみんな集まることになったのだった。
『やったー!!!!!』
車の中で大はしゃぎのミンホとテミンは、チャイルドシートを破壊しないかドキドキものだった。
ふたりの家に寄ってお子様達をお預かりする。
小学1年生も後半なジョンヒョン君が、超絶大人にすら感じる。
キボミちゃんは相変わらずファッショナブルで帽子をエロ被りしてるけどなんか素敵だった。
車の中では既にパーティだった子供たち。
幼稚園に着くと、シウォンが出迎えてくれて、子供たちを全部抱っこして抱えて行った。
そうしているシウォンは本当のスーパーマンみたいだった。
『あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。』
夫が先生達という友人達に挨拶をする。
僕はイトゥク先生に持ってきた夫の実家お手製のお餅達を渡す。
まるで奥さん同士のペコペコをしてひとりひとり挨拶をする。
『オニュせんせえ、あけおめ~』
こら、ミノ、きちんと挨拶しなさい。
おめでとう。今年もよろしく。』
子供たちを両腕に抱えるように抱きしめるオンユ先生。
テミンは狼の尾っぽを力いっぱい振って甘えていた。
『ジョンヒョナ、また大きくなったね、』
『へへ、』
そんなジョンヒョン君はオンユ先生に、ひしと抱きついていた。
キボミちゃんは照れながらもハグをされて嬉しそうにしてたっけ。
ミンホはテミンの手を引いて、オンユ先生と子供たちと一緒に奥の方へ入っていった。
『年末の番組見たよ、とてもよかった。』
シウォンがそう話しながら夫と握手している。
するとプリッツ的なお菓子を食べながらキュヒョンがこちらにやって来て、そのお菓子を差し出される。
挨拶もそっちのけで、1本摘んでポリポリ。
『あー、あのさ、』
目を逸らしながらお菓子を食べつつ話し始める。
言い難いことがあるのだろう。
新年早々何をやらかしたのかこのシロクマは。
『…、赤ちゃん出来た時って、どんなだった?』
そして小声になる。
ん?
赤ちゃん?
『、おま、』
『いやまだ、全然、出来てないけど、』
『…お前、』
『いや、なんか、その、欲しいってめっちゃ言われてて、』
ちらりシウォンを見る。
いつもの調子で夫との会話を続けている。
『俺たちもうアラサーだし、あんまり高齢でもあれがそれだし、』
あれがそれね、うん。
『まあね、』
白いもちもちしたほっぺたが赤くなっている。
はあ、親友のこんな顔を見るというのはなかなかないので新鮮過ぎる。
『まあ、出来た時って実感はないけど、授かるかもみたいな予感はあったなあ。』
『まじか、』
『うん、そういうのって多分お互いの波長みたいなものか予感を感じるっていうか。欲しいねって気持ちがシンクロしたなぁって思った時っていうか、』
『…、』
そこでまた赤くなるシロクマはちらりと自分の旦那を見た。
『まあ、うん、覚えとく、』
『頑張れ、待ってる。』
『うん。』
わりと素直な返事に、じわじわと喜びが押し寄せる。
親友夫婦と並んで子供を連れて遊んだりすることがいつか出来るかもしれないのだ。
いい報せが届いたら、きっともっと胸がいっぱいになるのだろう。
それはもう、苦しい程に。
室内を見渡す。
園児と卒園児が大好きな先生を囲んで楽しそうにしている。
先生達が笑いながら話している。
その中に夫婦があって、いい雰囲気を出したり、他の先生から冷やかされたりして楽しそうにやっている。
そして僕と夫もその中にいて、先生ひとりひとりと親友のように接することが出来ている。
園長がまたどこかから連れてきた可愛いワンちゃんをお披露目して子供たちと遊んでいる。
親も子供も先生も、みんな同じレベルで笑っている。
僕は「子供の言っていることだから」とあしらう様な扱いをしないここの大人達が大好きだ。
自分の子供も預けて良かったと本当に思うんだ。
『今年は、もうちょっと、俺もイベント参加出来るように頑張るから。』
夫がぽつりと言った。
視線の先には大切な友達と先生にくっついて楽しそうにしている長男と次男の姿。
僕達の仕事が増えるってわかっているのにね。
でもやっぱり、あんなふうに楽しそうにしている姿を見ると、もっと見たいって思うよね。
親がちゃんと来てくれているって思ってもらって成長して、そしていい思い出を抱えて生きて欲しいよね。
こういう仕事をしているから、尚更意地になっちゃう部分もあるかもしれない。
『あなたが動きやすいように、僕も頑張りますから。』
これ以上何をどう頑張ればいいのかもわからない。
でも、ふたりで同じ目標と願いを持っていれば、きっと何かの答えは見つかるよね。
素敵な先生がいるのだから、きっと相談だってできるもの。
そんなふうに期待を抱くことができるこの幼稚園が、僕はとても大好きだ。
今年も1年生、僕達一家の成長を送ることが出来ればいいなと思っています。
またどうぞ、お付き合いをよろしくお願い致します。
(⌒▽⌒)こ(ㅎㅅㅎ)と(6v6)よ(`ㅂ´*)ろ( ㅍ_ㅍ )