空と海と大地とあかり

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隊長を初めてお風呂に入れた時

トントンとノートと参考図書を机に立ててまとめながら。

彼がふふふ、と笑った。

 

 

「知人、って・・・大事な人・・なんですか？」

 

翔は返事に迷った。

聞かれている大事な人というのは・・

自分がサトシを想うのとは違うのかもしれない。

しかも人ではない。

それでも・・・大事な他にはない・・・存在。

 

答えを迷っている間に、また、彼はふふふ、と笑った。

 

「僕は大野智。

きみの知ってる人も同じ“さとし“だなんて、偶然なんだろうけど・・・

面白いね。

よかったら、このあと、ビュッフェでご飯一緒にどう？」

 

 

 

ビュッフェなんて洒落た名前のその場所に、翔は馴染みがなかった。

女子ばかりが集まっているに違いないという思い込みがあった。

行ってみると女子だけではなく、男子学生の姿もあった。

学食並の値段に学食と変わらない内容のメニュー。

そこに女子が好きそうなメニューもある、という違いだけだった。

 

肉たっぷりの焼肉定食を載せたトレイを持って、翔は智に付いていった。

ちょうど昼時、ほとんど空いたテーブルがない中。

迷いのない足取りで智はテーブルの隙間を進んでいく。

窓際のあかりがたっぷり入るテーブルがぽつんと空いていた。

 

 

「ここ僕の席」

 

テーブルは窓に対して斜めに置いてあった。

外がよく見える席。

いたずら好きの子どものような顔をして、智はその席に座った。

智はテーブルの角を挟んだ席を指さした。

 

「そこ、今日から翔くんの席ね」

 

智に自己紹介しただろうか？

翔は名前を呼ばれたことに違和感を持った。

授業前のやりとりの記憶がもうハッキリしない。

ほんのちょっとの違和感をかき消すように智がふわんと微笑んだ。

同じ授業を取っているから、きっと共通の友人から聞いたのかもしれない。

翔は違和感をないものにした。

 

翔は言われた席にトレイを置いて、座った。

 

 

 

話してみると、智は意外と人好きのする性格だった。

教室で感じた、どことなく近寄り難い雰囲気は消えていた。

それでも、ビュッフェのテーブルで二人で話しているその空間が・・・

周囲から隔離されたように思えた。

 

あの教室で智に話しかけた、という一歩を踏み出したことで。

翔は智の内に取り込まれたような気がした。

 

 

それは森の中のあの空間にも似たものだった。